変形性膝関節症に対する膝伸展筋の筋力強化の意味合い

リハビリテーション

変形性膝関節症(以下膝OA)患者への大腿四頭筋訓練は一般的であり、医師からの指導も多々行われるものです。しかし、若いPTや学生が患者さんへ「膝OAに対して、大腿四頭筋強化は痛みに対して有効である」との説明をしている場面に遭遇しました。何を持って大腿四頭筋が変形性膝関節症に対して有効なのか、説明できるようにこの記事でまとめています。

変形性膝関節症の特徴

膝OAは加齢などによる経年劣化によって膝関節軟骨の摩耗が生じ、それに伴い関節面の変形や痛みが生じる疾患であることはみなさんご存知だと思います。特に膝関節への内反モーメントが生じ、関節面が変形することで関節の適合性が悪くなり、関節包や滑膜への機械的刺激(メカニカルストレス)が大きくなります。関節包には侵害受容器が存在しているため、メカニカルストレスによって侵害受容性疼痛が生じます。これが膝OAの痛みの原因と考えられています。

また、侵害受容性疼痛が慢性化すると中枢神経感作が引き起こされ、下行神経抑制機構の機能不全が引き起こされます。それによって神経障害性疼痛であったり、閾値の低下によりわずかな刺激で痛みが生じるなどの状態が続き、痛みが慢性化していきます。

このような慢性化された疼痛や変形の進行による可動域制限がADL制限につながり、高齢者の活動性を下げる可能性があるのが膝OAの特徴です。

なぜ膝OAに大腿四頭筋の筋力強化が推奨されていた?

膝OAの痛みではメカニカルストレスが原因であることは上述した通りです。このメカニカルストレスは主にO脚変形に伴う内反モーメントの増大によるメカニカルストレスが大きいとされています。

ここで考えてみてください。
内反モーメントは前額面上での力学的ストレスです。しかし、大腿四頭筋の運動は膝の伸展であり、矢状面上での動きのため内反モーメントとは関係がありません。それにも関わらず、DrもPTも大腿四頭筋の筋力強化を推奨することが多いのはなぜでしょうか?

これには膝OA患者の多くが内側広筋に筋萎縮が生じることで、膝の痛みや筋力低下に伴うADL機能の低下が生じるためです。膝OAによって関節面の機能が低下し、関節包も損傷を受けます。それによって固有受容器へ過度な圧力が生じ、関節原生筋抑制が生じます。その関節原生筋抑制は特に内側広筋に生じ、内側広筋の筋萎縮から徐々に大腿四頭筋全体の筋力低下につながることで痛みやADL機能の低下につながるとされています。

つまり、大腿四頭筋の筋力強化は膝OAの進行を止めるものというよりは膝OAの結果として弱くなりやすい筋への対症療法ということになります。膝OAにとって大腿四頭筋筋力強化は重要なことですが、盲目的に膝OA=大腿四頭筋筋力強化と考えアプローチすることは根本の解決にはなり得ません。

膝OAの治療で重要なこと

膝OAで重要なことは膝関節へかかる内反モーメントを減少させることと考えて良いでしょう。では内反モーメントはどのようにして生じるのでしょうか。

そもそも膝関節は蝶番関節であり、内反のような動きをするような関節ではありません。それにも関わらず、内反するということは膝関節以外の要因が大きいということを指します。よく言われていることが大腿骨に対して脛骨が外旋すること、寛骨の後傾による大腿骨の外旋、扁平足に伴うToe-outなどの原因が挙げられています。

※石井慎一郎 著 動作分析臨床活用講座 MEDICAL VIEW p227 より引用
これらの運動連鎖によって膝関節への内反モーメントが増大することで膝OAが進行します。つまり、膝OAだからといって膝のみに焦点を当てたアプローチを行っても症状の根本の解決につながらない可能性が大きいということです。

膝のROMのみを見るのでなく股関節のROMを見てみたり、歩行時の左右への重心動揺、体感を含めた全体の筋力など、膝以外の部分に目を向けることが膝OAの治療で重要となることが多いので注意しましょう。

まとめ

膝OAに対して盲目的に大腿四頭筋訓練をすることに警鐘を鳴らすためにこの記事を執筆しました。膝OAの原因となる内反モーメントの制動に大腿四頭筋が重要とする研究も確かに存在します。しかし、そもそも内反という膝本来の機能にない動きを考える上で、膝以外の部分に目を向けることは重要なことです。この記事が少しでも参考になれば幸いです。

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