循環器系と電解質の関係

生理学

以前、心臓の収縮には3つの電解質(イオン)が関与しているとの話をしました。

「イオンなんて目に見えないし、この知識が医療の現場でどう役に立つの?」と思う方も少なくないでしょう。勉強のモチベーションも上がらないかも知れません。

ただ、この知識かなり汎用性が高いです。医師以外のコメディカルでもめちゃめちゃ使えます。

心臓の収縮は、心筋細胞へのナトリウム(Na+)の流入カルシウム(Ca2+)の流入カリウム(K+)の流出の流れで生じます(詳細は過去の記事を参照)。つまり、体内のNa、Ca、Kの量や働きが心臓の活動に影響が生じることになります。

この3つの電解質について、ひとつずつ整理していきましょう。

  • Naの異常:高Na血症、低Na血症
  • Caの異常:高Ca血症、低Ca血症
  • Kの異常 :高K血症、低K血症

Naの異常は以下のように定義され、高Na血症や低Na血症として診断されされます。

( 低Na血症)135mEq/L < 正常 <  145mEq/L (高Na血症)

ポイントは、上記の基準値はNaの『量』ではなく『濃度』という点です。ここでいう濃度とは液体に溶けているNaの量のことなので、Naの量に変化がなくても体内の水分量が増えると低濃度になるし、水分量が増えると高濃度になります。

水をがぶ飲みすればNa濃度は低下し、脱水になるとNa濃度は上昇するということです。

心臓におけるNaの役割は、心筋収縮の1番手であり急速に脱分極を促します。脱分極とは静止膜電位(-90mV)を興奮状態(0mVの方向)に向かわせることでしたね。この作用を応用して作られたものが『Naチャネル遮断薬』というものです。

心臓は ポンプのように 収縮と弛緩を繰り返して全身に血液を巡らせていますが、一定のリズムが保てなくなることもあります。不整脈というやつです。これがたまに起こるくらいなら血液の循環に影響はないのですが、長時間や高頻度で起こると筋肉や臓器への酸素供給が十分行われなくなり様々な症状を引き起こします。

不整脈の詳細については別の機会に解説します。

さて、この不整脈ですが収縮のタイミングがズレたというだけで、心筋の収縮活動であることには違いありません。何が言いたいのかというと、収縮のきっかけを作るNaの細胞内流入を制限すれば過剰な心臓の活動を食い止めることが出来るのです。

『Naチャネル遮断薬』のチャネルとは細胞内と細胞外を繋ぐトンネルのことで、これを遮断しまおうという薬なのです。不整脈は収縮のタイミングや心電図波形の異常の総称であり、たくさんの種類があります。 Naチャネル遮断薬も不整脈のタイプに合わせた複数の種類がありますが、ここでは割愛します(学生や初学者には不要でしょう)。

上の図のようにNaの細胞内流入を制御することで、収縮を緩やか(青線)にすることが出来るのです。

少し難しい内容でしたが、低Na血症であれば「 体液量の増加がないか体重の経過をみようかな?からだのむくみは出てないかな?」と所見を確認するでしょうし、高Na血症であれば「脱水ではないのかな?利尿剤(尿を増やす薬)は飲んでたかな?」と問診や服薬の効き方にも気を配れるでしょう。

次にCaの異常についてですが、そもそもCaの役割は何だったでしょうか?そうです。心筋収縮のメインを担当するのです(Naはあくまで切り込み隊長で、Caがメインです)。Caに対する薬は、主に心臓を栄養する冠動脈や全身の動脈の平滑筋に対して収縮を阻害する目的で用いられます。

どういうことかというと、血管の収縮や弛緩は平滑筋という筋肉で行われているので、Caの細胞内流入を阻害することで血管が拡張した状態になるのです。

これが役に立つ場面といえば、ずばり高血圧の是正と 狭心症の改善です。高血圧の是正は 全身の血管を拡張することで、また狭心症の改善は冠動脈の狭窄や攣縮(一時的に収縮するけいれんみたいな状態)による血液供給不足を防ぐことによるものです。

看護師さんであれば日々の血圧管理に注目すべきですし、理学療法士や作業療法士はリハビリ中に労作時の胸痛が生じないか観察することができ、リスク管理に一役買うことになるのです。

最後にKですが、まず役割はなんでしたか?NaやCaが細胞に流入し心筋細胞は興奮状態にありますので、これを落ちつかせるには代わりに何かが細胞から出ていけばよいのです。Kも陽イオンなので、これが細胞から出れば良さそうですね。

この時、NaやCaは細胞に入ってきたばかりで細胞の外との濃度差は小さいです。一方、Kはあまり細胞外には出ていないので細胞内外の濃度差が大きく動きやすい状態にあります。

しかし、このKというのは主に腎臓で処理されて尿として排出されるので、腎不全になるとKが十分に排出できず高K血症となってしまいます。また、カリウムのサプリメントや生野菜、果物、コーヒーなどの摂り過ぎも高K血症の原因となります。

体内のKが多くなると細胞内外の濃度差が生じにくくなるので、Kが細胞内に留まり静止膜電位そのものを上昇させてしまうのです(下図の青線)。

静止膜電位が上昇するということは、Naのわずかな流入で収縮してしまうということを意味し、頻脈性の不整脈の原因になり、さらに高度になると心停止にまで発展してしまいます。ざっくりでもいいので、この内容を知っていると

「腎臓の病気は持ってたかな?食事の管理は出来るのかな?管理栄養士さんに栄養指導の依頼を行った方がいいかな?」などの関わりも考慮することが出来るのです。

いかがでしたか?ごく一部でしたが何の役に立つか少しイメージできたでしょうか?

学生はモチベーションの上昇と生理・疾患学の整理に、コメディカルは明日からの臨床に役立ててもらえたら幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました