肩の安定化における肩甲下筋の働き

肩関節

肩甲下筋といえば肩回旋筋腱板のうち内旋の作用がある筋肉として皆さん周知の事実だと思います。その腱板の中でも肩甲下筋がどのように肩の安定化に関与していくのか、この記事で解説していきたいと思います。

肩回旋筋腱板の働き

学生のうちなど作用を覚えることが主になり、腱板も動作筋として覚えている学生を担当したことが多々あります。確かに動作にも関与しますが、腱板の主な働きは骨頭を関節窩に押し付けることにあります。

肩関節は骨頭と関節窩が関節包で覆われており、常に陰圧になっていることで骨頭と関節窩が引き寄せられる形になり、安定化しています。そのうえに腱板が関節窩へ骨頭を引き寄せてくれることでより安定します。これにより関節内での骨頭の軸回転が容易になり、三角筋をはじめとしたいわゆるアウターマッスルが働きやすくなることで肩の動きが遂行されます。

肩甲下筋の働き

そのうち、肩甲下筋は特に肩の前方の安定性に大きく関与します。肩甲下筋は肩甲下窩から上腕骨小結節へと付着している筋肉です。その走行は関節軸に対して下方から上方へ、後方から前方へと走行しています。そのため、骨頭の前下方の安定性に大きく関与しています。

肩関節は構造上骨性支持が得られにくい関節であるため、その安定性の多くを筋肉と靭帯に依存しており、筋肉で言えば前方の安定性は肩甲下筋に依存しています。

関節軸に対して後方から前方へ向けて走行しているため収縮することで骨頭を後方へ押し戻そうとします。つまり、骨頭が前に出ていくのを止める役割をしています。特に肩関節はその特性上骨頭が前に出ていきやすい関節です。そのため、肩甲下筋が骨頭を前に出ていくことを止める役割は非常に重要になります。

また、下方から上方へ走行しているため、骨頭を下へ押し下げる役割も果たします。例えば肩関節が移転で三角筋が収縮すると当然上腕骨派が移転していきますが、この時三角筋に引っ張られる形で骨頭も上方へ引き上げられ、関節窩から離れるような動きをしてしまいます。この骨頭の上方へ離れる動きを止めるのが、下方から上方へ走行している肩甲下筋です。骨頭が上方へ動き際にも肩甲下筋が関節窩へ引き寄せてくれるため、肩の動きは安定します。

左:肩甲下筋の水平面の走行、右:肩甲下筋の前額面の走行)

このように肩甲下筋は腱板の中でも大きな役割を果たします。そのため、腱板の中でも最も大きな筋断面積を持ちます。

肩甲下筋の筋繊維の違い

肩甲下筋は大きな筋肉ですので、上部と下部に分類されます。この違いは大きく、支配神経も上部2/3は上肩甲下神経、下部1/3は下肩甲下神経支配になります。支配神経も違えば当然機能も違ってきます。

大きく違うのはその走行です。

上部繊維は小結節に向かってより横に近い形で走行しているので、より水平面での動きが強調されます。特に下垂位でその作用が大きくなります。肩の前方不安定性が大きな患者さんでは肩甲下筋の上部繊維の働きの評価をしてみてください。

下部繊維では下方から上方へ走行する縦方向の働きが大きくなるので、骨頭を下方に押し下げます。骨頭が上方へ過剰に変位してしまうような症例では肩甲下筋の下部繊維が重要なアプローチ対象となります。特に第2肩関節でのインピンジメントを呈する症例では肩甲下筋の下部繊維の収縮が弱いことが多いため、良く評価してみてください。

まとめ

腱板の中でも、最も大きな肩甲下筋に着目してみました。記事内でも触れましたが肩関節は骨製支持が弱い関節であるため、腱板による骨頭の安定化作用は非常に重要です。その走行からどのような働きをするか考えることが大切ですので、肩甲下筋に限らずその他の腱板筋も走行と作用に着目してアプローチしてみてください。

おすすめ書籍

コメント

タイトルとURLをコピーしました