肩関節の脱臼が前方に起きやすい理由

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肩関節の脱臼が前方に起きやすい理由

肩関節は自由度の高い関節である分、上腕骨頭周囲の組織による骨頭支持力が非常に重要になる関節です。

特に後方と比較し、前方は不安定性を呈することが多く、肩関節の機能向上を図る上では非常に重要です。そこで今回の記事では肩関節前方安定性について解説していきます。

肩関節の安定化機構

そもそも肩関節は骨頭に対して、関節窩が非常に小さい関節です。似たような構造の関節で言えば股関節がありますが、股関節は関節窩が大きい上、荷重によって関節窩が骨頭に押し付けられるような構造になっている関節です。そのため、よほどのことがない限り脱臼しません。

対して肩関節は関節窩が小さいうえ、重力によって骨頭と関節窩が常に引き離されるようにストレスがかけられています。そのため、股関節と比較すると不安定な関節です。そこで肩関節の関節窩周囲には関節包があり、骨頭を包み込む形で関節窩へ押し付けられています。

つまり関節包の働きによって、肩関節は常に陰圧に保たれています。

陰圧とは外気圧に対して、関節内圧が低い状態です。そのため、関節内の空気は外に逃げようとせず、関節内に止まろうとします。つまり、骨頭を関節へ引っ張ってくれるのです。この陰圧により骨頭は関節へ引きつけられ、肩関節は安定します。

この関節包による陰圧の他、靭帯や腱板の張力も加わり、肩関節は自由度が高いながら安定性を保ち自由な運動が可能となっています。

なぜ前方脱臼が多いのか

肩関節脱臼は全関節の脱臼のうち50%以上を占め、さらにその肩関節脱臼の中でも前方脱臼がおよそ95%と圧倒的な割合を占めます。

ではなぜここまで前方脱臼が多くなるのでしょうか?

構造上の問題から考えてみましょう。

・肩甲骨の運動学の問題

肩甲骨は肋骨の上に付着する浮遊骨なので胸椎・肋骨の影響を大きく受けます。

胸椎は重心線が関節中心よりも前方へ位置するので、伸展よりも屈曲の方が得意な関節です。

そのため、肋骨も胸椎に付随して前方回旋することが多くなります。

胸椎が屈曲、肋骨が前方回旋すると肩甲骨は付随して外転します。肩甲骨の外転は肋骨に沿う形に動きますので、実際には斜め前方へ動く形になります。

ここでこの肩甲骨の動きをベクトル分解してみましょう。斜め前の動きはつまり側方と前方へベクトル分解できますね。そうです、肩甲骨の動きによって前方ベクトルが生じます。

特に肩甲骨は内転よりも外転の可動域が大きいですから、より前方へのベクトルがかかりやすくなります。これが前方へ脱臼しやすい理由の一つです。

また、この前方へのベクトルはすなわち後方へのストレスを緩和してくれます。後方へ大きな力がかかっても前方へのベクトルが衝撃吸収に働いてくれるわけですね。つまり、後方への安定性が強くなりますので、後方脱臼しにくくなります。

・大胸筋の存在

大胸筋は肩関節前方へついている大きな筋肉です。この筋肉は肩関節の運動軸の前方へ位置し、上腕骨に付着しているため緊張が高くなると上腕骨を前方へ引っ張るように動きます。

また上述した通り胸椎は屈曲しやすくなります。胸椎が屈曲すると大胸筋はどうなるでしょうか?肩甲骨は外転し、起始と停止は近づくため、大胸筋は短縮してしまいます。大胸筋の短縮は上腕骨を前方へ引っ張る力をより強めてしまいます。つまり、前方不安定性につながるわけです。

この大胸筋の緊張も肩関節前方脱臼へ繋がりやすい原因の一つです。

まとめ

肩関節前方脱臼が多い理由について運動学、解剖学の側面から解説しました。解剖学的にも運動学的にも肩関節は不安定になることの多い関節です。そのため、リハビリが非常に重要になります。

特に肩関節前方脱臼はバンカーと損傷により反復性肩関節脱臼に繋がることが多くなります。その原因について考え、肩関節だけでなく脊柱や肩甲骨からアプローチすればより良い結果に繋がります。

ぜひ、肩関節の脱臼がしやすい原因からアプローチする癖をつけてください。

参考書籍

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