はじめに
脳性麻痺は主に出生時から身体に麻痺症状が見られる小児疾患の代表的なものです。
理学療法の対象となる小児疾患の中でも最も歴史が長く、小児理学療法において昔も今も脳性麻痺が中心になっています。
そういった脳性麻痺のお子さんを運動能力で分類する評価法に粗大運動能力分類システム(GMFCS)があります。
今回は、脳性麻痺の評価法の中で最も信頼性が高く重要であるGMFCSについて紹介していきたいと思います。
GMFCSを理解すれば脳性麻痺の予後を予測することができる
実際にGMFCSとはどういった評価法なのかというと以下にまとめてみました。
・脳性麻痺児のために作られた評価法で粗大運動能力をレベルごとに分類する評価法。
・年齢区分ごとに日常生活で実施している動作を粗大運動能力ごとに区分することで、将来的な運動能力をある程度予測することが出来る。
・日常生活内の活動を評価する必要があり運動麻痺の回復の見込みは反映されない。
5つのレベル(運動能力)の一般的な見出し
レベルⅠ・・制限なしに歩く
レベルⅡ・・制限を伴って歩く
レベルⅢ・・手に持つ移動器具を使用して歩く
レベルⅣ・・制限を伴って自力移動(電動の移動手段:例えば電動車いす)
レベルⅤ・・・手動車椅子で移送される
このようにレベルⅠが最も身体運動能力が高く、レベルⅤになるにつれて身体運動能力が重度になっていきます。
年齢別の区分
・出生してから2歳の誕生日の前日まで
・2歳から4歳の誕生日の前日まで
・4歳から6歳の誕生日の前日まで
・6歳から12歳の誕生日の前日まで
・12歳から18歳の誕生日の前日まで
このように年齢別の区分にそれぞれレベルⅠ~Ⅴの内容が書かれており、その内容に沿ってレベルを分類します。
年齢別の分類は、脳性まひであれば出生後すぐに分類することが出来ます。
基本的には出生後のレベル分類がその後もそのまま反映されます(例えば産まれてすぐにレベルⅠで分類したとしたら、18歳の段階でもレベルⅠ)。
しかし、出生後の段階はかなりレベルの分類の判断が難しく2歳までは運動能力が急激に発達するため、出生してから2歳までの分類ではその後の年齢で変化することがあります。
そのため、再度2歳以降に分類する必要があります。
逆に2歳以降は、それまで培ってきた運動経験がそのままその後も反映されるので、GMFCSの大きな変化はあまり見られないのが特徴です。
『脳性麻痺理学療法ガイドライン 第1版』によると、GMFCS レベルⅢの運動発達のピークは7歳11ヶ月ごろで、GMFCS レベルⅣとⅤの運動発達のピークは6歳11ヶ月ごろと言われています。
脳性まひの運動発達は、GMFCS レベルⅠとⅡは運動発達が後退することはありませんが、レベルⅢ~Ⅴは、運動発達のピークを過ぎると生涯に渡って身体運動能力が緩やかに低下してきます。
ということは、脳性まひの理学療法はレベルⅠとⅡ、レベルⅢ~Ⅴと別の目標を考える必要があるということです。
レベルⅠとⅡは緩やかに粗大運動能力は向上していくので、成人になっても運動能力が低下しないように日常生活の中で運動を定着させていくこと。
レベルⅢ~Ⅴは、徐々に後退していく運動能力を把握しながら日常生活に役立つ身体活動を早い時期から定着させることが重要です。
まとめ
GMFCSは脳性まひの重症度を分類し、その予後を把握することが出来る優れた評価指標です。
小児疾患全般に言えることですが、成長していく身体発達を生涯に渡って予測していくことはとても重要だと思います。
そういった意味でGMFCSは脳性まひの予後を予測することが出来る唯一の評価指標です。
どのような評価指標なのかしっかりと理解できるようにしていきましょう。
※GMFCSの日本語版はPDFでダウンロード可能です↓http://www.fujita-hu.ac.jp/FMIP/GMFCS_%20ER_J.pdf
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