膝関節におけるLateral thrustの病態とその治療法を解説!

リハビリテーション

以前実習で担当した学生に質問したところ、「Lateral thrustは内転筋を鍛えることで膝関節中心の外側動揺を抑えれば良いと考えます」と答えました。学校でもそう習ったとのことですが、果たして内転筋のトレーニングだけでLateral thrustは制動できるのでしょうか?この記事ではLateral thrustの病態からその対処方法について考えていきたいと思います。

Lateral thrustとは

変形性膝関節症(以下膝OA)患者の歩行の特徴として挙げられるのがLateral thrustです。立脚期に膝関節中心が外側に動揺することで膝関節が内反し、内側膝関節裂隙への圧迫ストレスが増大、痛みや変形を助長するという症状です。

Lateral thrustは主に立脚初期〜中期に多く発生します。踵接地から徐々に荷重量は増えていき、中期は完全に片脚立位の状態で最大荷重位であると言えます。また、立脚中期には身体重心は側方へ最大に移動しています。つまり、膝関節で言えば最大に内反モーメントが大きくなる瞬間といえます。この内反モーメントがLateral thrustを引き起こしていると考えられます。

Lateral thrustの原因は?

上述した通り、Lateral thrust歩行時の内反モーメントが大きくなるにつれ引き起こされることが多くなります。しかし、内反モーメントが大きいだけではLateral thrustが引き起こされるわけではありません。なぜなら、内反モーメントが大きくてもLateral thrustが生じない膝OA患者もいます。その差について解説していきます。

・膝関節の不安定性

過去の研究からもLateral thrust患者の多くは脛骨の外旋を伴っています。脛骨の外旋は膝関節の靭帯の適合を弱めてしまいます。靭帯性の支持が弱くなることで、膝関節の安定性が低下し、内反モーメントに耐えられなくなります。それがLateral thrustにつながります。

また、膝関節の伸展不全も大きな要因です。膝関節は伸展位になることで安定し、支持力が大きくなります。大腿四頭筋の筋力低下が見られている患者が反張膝を呈するのは筋力の指示が弱く、骨生支持に依存するためですがこれは膝伸展位で骨生の支持が大きいことを意味します。つまり、膝伸展制限がある患者では膝の骨生支持がうまく受けられません。骨性支持の低下が膝の不安定性につながり、Lateral thrustを助長します。

・筋力低下

膝OA患者は内側広筋を中心に筋力低下がみられます。これは関節の変形に伴う関節原生筋抑制が働くためと考えられています。上述した通り膝伸展制限がある患者では骨生の支持が得られません。そのため、筋(特に大腿四頭筋)に膝の安定性を依存しますが、変形が大きいと関節原生筋抑制によって筋出力が低下します。

骨生の支持も筋性支持も得られなくなった関節は安定性が欠如します。このような状態でない反モーメントが働くため、Lateral thrustに繋がると考えられます。

Lateral thrustに対しての理学療法とは?

Lateral thrustは上述した通り、内反モーメントによるところが大きく関わっています。つまり、その内反モーメントを減少させることができればLateral thrustの軽減にもつながります。

・骨盤の左右傾きの制動

歩行時、立脚側になるにつれて骨盤は立脚側へ平行移動します。この平行移動において中電筋の筋力低下があれば骨盤の傾斜が引き起こされ、デュシャンヌ歩行やトレンデレンブルグ歩行が引き起こされます。これらの歩行ではともに立脚側と反体側へ骨盤が傾斜するため、結果として膝へかかる内反モーメントは大きくなります。また、この平行移動は内転筋の筋出力が低いと起きず、この場合でも膝へかかる内反モーメントが大きくなります。

そのため、骨盤の平行移動によって内反モーメントを減らそうと考えれば内転筋だけでなく、外転筋群の出力を高めることも必要になります。筋出力を高める場合には動作筋だけでなく、ブレーキとして働く拮抗筋の関係も考慮して考えていきましょう。

・前方への推進力を高める

左右への重心移動が大きくなればそれだけ内反モーメントが大きくなります。この重心移動を左右でなく、前方へ大きく動かすことができれば結果として左右への重心移動が小さくなり、内反モーメントの減少に繋がります。

この時重要となるのが大臀筋です。大臀筋は推進力のブレーキの役割を果たします。推進力を高める場合、前脛骨筋やハムストリングスなどの菌を考えるかもしれません。しかし、ブレーキのない自転車でスピードを出すことを考えてみてください。おそらく恐怖でスピードを出せないはずです。歩行でも同様で、いくら推進力を生み出す筋を鍛えてもブレーキがなければスピードが出せません。また、大臀筋は歩行時のブレーキとなるだけでなく、長慶靭帯を介して膝の安定性にも関与します。その意味でも大臀筋を鍛えることは重要です。

まとめ

Lateral thrustは直接痛みに関与するわけではありませんが、放置しておくと膝関節の変形を助長してしまう恐れがあります。純に筋を鍛えるのでなく、物理学や生理学の観点から患者さんにとって最も効率の良い方法を選択してあげてください。

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