臨床研究のススメ

大学院

臨床研究のススメ

この記事は主に新大学院生(修士)のことを考えながら書いています。

理学療法領域における大学院生にとって4月はやる気に満ち溢れ「やったるぞ!」と息巻いていることでしょう。

大学からストレートで進学する人よりも何年かの臨床経験を経て、クリニカルクエスチョンを形にしたいとの想いから進学に踏み切った方が多いのではないでしょうか。

新型コロナによってこのスタートダッシュが見事に挫かれたわけですが、そんな今でも院生としてやるべき事は山ほどあります

理学療法士は臨床業務や間接業務がほとんどで、研究に割く時間は残業や休日返上など自主的に確保する必要があります。そもそも教育過程での指導が十分とは言えないため、多くの院生は研究のイロハからの勉強になるわけです。

他業界からみると少し特殊かもしれませんが、研究スキルがほぼ無い状態で、大学院に進学する人も少なくないのです。

当然、この状態では研究方法を学ぶところからスタートしなくてはならず、ここで躓けばデータ収集や解析、執筆に掛ける時間がどんどん圧迫される事態となるのです。

それを教わるために大学院に進学するという考えもなくはないですが、放置主義の教授も少なくないです。(自分で問題を解決する能力も鍛えないといけないので、手取り足取り教えないということです。放置が悪いとは言っていません。)

今やるべきことはなんなのか?

統計?有意差?バイアス?交絡因子?そんなの後です。

多くの院生は1年次の年末に研究計画の報告会が控えており、そこで教授陣に自身の考えを伝えられなければお蔵入りする可能性だってあるのです。

ここで認識すべきことは、教授といっても全ての領域に精通しているわけではないということです。ある専門領域に特化しているので、ライバルが少なく教授になれたという方もいます。

そんな教授陣がしてくる質問は大体以下のような感じです。

・わかりやすく言ってどんな研究なの?
・どんな価値があるの?
・実現することは可能なの?
・倫理的に大丈夫?

自分と教授がドンピシャで研究領域が被ってなければ、この辺を押さえておけば年末の発表会を乗り切れるはずです。

研究を組み立てる

まず研究デザインを組み立てる前に考えるべきことは、①臨床的疑問を②研究課題とし、③明らかにするための構造を考えて、④良い研究デザインに整えるということです。

①臨床的疑問を(クリニカルクエスチョン)
②研究課題とし(リサーチクエスチョン)
③明らかにするための構造を考えて(PICO or PECO)
④良い研究に仕上げる(FINER)

大学院に進学しているということは、おそらくCQとRQの段階にいると思いますので、研究の構造:(PICO or PECO)と良い研究の条件:(FINER)に重点を置いて説明していきます。

研究の構造:PICOとPECO

研究の構造:(PICO or PECO)とは、研究デザインを組み立てる時の4つの項目の頭文字です。

4つとは、どのような対象者に(Patient)、どのような介入を行い(Intervention)、何と比較して(Exposure)、どのような結果が予測されるか(Outcome)です。

介入に関して、例えば異なる環境下でのBMIの違いを調査する研究では、「介入」よりも環境に曝されているという「曝露」に該当するのでExposureとなります。このように研究の内容によってはPICOかPECOかが異なりますが、根底の考え方は同じです。

P:Patient→対象(者)
I:Intervention→介入
 (E):Exposure→曝露
C:Comparison→比較
O:Outcome→結果

ここまで考えたら、次は良い研究にするために考える条件があります。

良い研究の条件:FINER

良い研究の条件(FINER)とは、実現が可能か(Feasible)、興味深い内容か(Interesting)、新規性はあるか(Novel)、倫理的な問題はあるか(Ethical)、社会的必要性はあるか(Relevant)ということです。

実現可能性(Feasible)とは、時間やマンパワー、使用する機器などでありある程度予測を立てられる部分ですが、特定の患者を対象にした前向き研究では思うほどデータ収集が進まないこともあるので過度に期待すると危険かもしれません。
昔から比較研究には、最低でも6症例ずつ必要と言われてきました。なんとか対象者が確保出来ても測定データの一部が欠損していたり、途中で参加できなくなったりと何かとトラブルはつきものです。

興味深いか(Interesting)については、あまり気にしなくてもいいかもしれません。どんなニッチな領域の内容でも必ずどこかに興味のある人がいると思います。大多数が興味があるものが正しいという訳ではありません。
ただし、教授陣に価値を認めさせるには研究者の興味だけでは不十分です。検証することでどのようなことが分かるのかを強烈にピールして興味を引く必要があります。独りよがりの研究は推奨されないのです。

新規性(Novel)は言わずもがなですが、先人が行ったことを後追いしても仕方ありません。ただし、先行研究と同じデザインでも、対象者が20人のものと1000人とでは話は変わってきます。
注意しないといけないのは、行われていないから良いというものでもありません。
価値がないから行われていないだけかもしれません。

倫理的な問題(Ethical)は、最も重要です。価値があり、新規性があっても対象者の人権を脅かすものは原則NGです。これはプライバシーや侵襲だけでなく、参加してもらうことによる時間的拘束や検査による精神的負担なども含まれます。
これらに関しては、事前に十分な説明を行い同意を取ることで回避できます。
また、院生の研究ではあまり見かけませんが、謝礼を渡すことで回避するという手もあります。
最初から対象者の割付が分からないデータを扱う場合には、仮に流出したところで個人情報として特定することができないので倫理審査すら受けなくて良いという場合もあるようです。
しかし、理学療法領域の院生の多くは医療施設に勤めおり、自身の施設の患者・利用者・職員を対象とすることが多いと思います。その施設に所属しているというだけで特定の材料になるので、上記に該当することはほとんどないでしょう。

社会的必要性(Relevant)とは、漠然としているようですが興味深さや新規性がしっかり主張できる研究では必要性も高まると思います。
あとは、業界のトレンドを押さえておくのも良いと思います。そのためには定期的に学会へ出席したり、学会誌をチェックする努力も必要です。

F:Feasible→実現可能性
I:Interesting→興味深さ
N:Novel→新規性
E:Ethical→倫理性
R:Relevant→社会的必要性

最後に

この知識は自身の研究デザインを組みたてるのに役立つだけでなく、論文を読む力も付きます。

私は、自分の研究に必要な論文を収集する段階でExcelにPI(E)COを入力して管理しています。

以下に論文を検索するサイトを添付しておきますので活用して頂ければと思います。

日本語

Cinii

Google Scholar

英語

PUBMED

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